- 2009年5月13日 09:49
- カクメモ
若い頃のクロッキーやメモが出てきた時に桂重英という山岳画家の事を考えた。桂重英は二十歳で安井曾太郎に師事したあと数々の賞をいただきながら美術の世界に入って行くが、26歳の時その美術の世界から退き、27歳で新潟と銀座にデザイン事務所をかまえデザイン界に身を置くようになる。しかしその世界からも退き1966年57歳の時に信州の山を描くためにデザイン事務所をたたみ私の隣村に居を構え1985年76歳で亡くなっている。没後十年後に「桂重英美術館」がご家族によって建てられた。家族というのはフルート演奏家でよく知られている桂姉妹。先日妹の聡子さんから美術館で演奏会を行いますという手紙が届けられたのでカミさんと久しぶりに美術館を訪ねた。お父さんの美術館を建てそこで演奏をする。そうか桂さんはいい娘さんを育てたんだなあ二人の姉妹こそ彼の最高傑作だなと思いながら彼女の演奏を聴いていた。そして休憩の時ステージの横に飾られた初めて見る小さな二つの風景画に息をのんだ。それは新潟の冬の漁村を描いたもので「たまたま描く道具を持ち合わせていなかったので父は友人宅にあった手元の段ボールに描いたようです」それはどう表現したら良いのだろう。筆のひと払いというかその一点の筆の跡に大きな意味があるそれは、よく言われるような哲学でもなく、一筆の流れのカタマリがそのまま作家の心のあるがままとして見ている者に視覚の中で温かく甘く切なく言葉では言い尽くせない、ああこれが風景画の神髄なのかと思わせるに十分だった。生きている時に会いたかった桂重英。桂重英が紆余曲線をたどりながら手にしたあの段ボールに描かれた冬の日本海の風景をぜひ見ていただきたい。桂重英美術館は平林と吉江さんが眠る広沢寺の入り口にある。桂重英は57歳の時に新しい土地でもう一度絵を描き始めたのか、すごいなあ。
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